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医療コラム

日本と欧米のメンテナンスに対する意識の違い|【公式】せんざき歯科医院|赤穂市の歯医者・歯科

日本と欧米のメンテナンスに対する意識の違い

日本と欧米のメンテナンスに対する意識の違い

前回のテーマであるお口のメンテナンスについて、じつは日本と欧米諸国との間には大きな意識の差があります。

日本臨床歯周病学会の報告によると、予防歯科の先進国であるスウェーデンの歯科定期健診を受診している割合が約80%、アメリカは約70%に対して日本は約10%とかなりの差があります。別の調査では34%や52.9%というデータもありますがそれでも低い水準であることは確かです。

車のメンテナンス、つまり車検は2年に一度受けるというのは皆さん当然のようにされていると思います。車は乗らない日もあると思いますが、お口は使わない日はありません。

ではなぜ、定期健診を受けるという習慣はそれほど定着しないのでしょうか。 

もちろん、車とお口を同じような基準で比較することはできません。また、外国と日本との医療制度の違いなどもありますのでそのあたりも考慮するべきかもしれませんが、少なくともお口の健康に対しての意識の差があることは確かなようです。

車検の場合は法律で決められた制度ですから自分の意思とは関係なく受けている部分もありますが、故障をした場合はとても大変なことになるので安全の為にきちんと車検をしておくという意識が皆さんの中にあるからだと思います。車の免許を取得するうえで車検の必要性もセットで国が啓蒙活動と制度化をしているところがポイントです。

歯科の場合は、国や歯科医師会が以前は啓蒙活動をきちんとしてこなかったという部分が大きいのかもしれません。近年では、学校で歯磨き指導の授業をする機会も増えてきていると思いますし、高齢の方を対象としたオーラルフレイル(お口の衰え)に対する講習会や、お口の状態が素晴らしい方を表彰するイベントなどが行われてきています。私の所属する赤穂市の歯科医師会でもそういった活動を行っています。こういった活動もあってか、近年日本でもお口の健康に対する関心は高まっているように思います。

 

歯科検診が義務化になる? 

政府は全ての国民に毎年の歯科検診を義務づける「国民皆歯科検診」の導入に向け、検討する方針を発表しました。

現在、乳幼児から高校生までは義務として歯科検診が行われています。今回の発表では、全ての国民に毎年の歯科検診を義務づける「国民皆歯科検診」の導入に向け、3~5年後の導入を目標に取り組んでいくとのことです。

企業に勤めている人は、毎年の健康診断に歯科の項目も追加するという形で導入できるかもしれませんが、すべての国民の義務化となると仕組みづくりの為にクリアしなくてはならない課題が沢山ありそうです。今後、国がどのような方針を示すのか注目したいです。

                            2022年5月30日  TBSテレビ

 

国が「国民皆歯科検診」の政策を検討する理由として大きく2つのことが考えられます。

①医療費の軽減

近年の高齢化に伴って医療費は毎年増え続けています。それに加えてコロナウイルス感染症の影響でさらに医療費の増加に拍車をかけている状況です。日本では、国民皆保険という素晴らしい医療制度がある国ですが、少子高齢化に伴って、財源の確保も年々難しくなっています。医療の発達によって寿命は延びましたが、長く生きることによっていろいろな病気にかかるリスクも増えてしまいます。その問題を少しでも解決するために考えていることが、ただ寿命を延ばすだけではなく健康寿命(健康で自立した生活を送ることができる健康状態)をいかに伸ばすかということを考えています。病気を発症する前段階で早期に発見したり、毎年の健康診断によって国民の健康に対する意識を高めることで、健康な人の割合を増やし医療費削減につなげるといった目的があるのだと思います。

②健康寿命の増進

近年、歯周病が糖尿病や心筋梗塞・脳梗塞のリスクに関与していることや、しっかりと噛めることが認知症の予防になることが分かっていて、お口の健康が体の健康に大きく関わっていることが注目されています。詳しくはまた別の機会にお話が出来たらと思います。

虫歯や歯周病といったものが直接命に関わる病気ではないことによって、ないがしろにされてきたお口の健康の重要性がこういった国の政策によって広まっていくことは歯科医療に携わるものとしてはうれしく思います。

 

しかし、国が歯科検診を義務化したとしても、国民一人一人がお口の健康の意義をきちんと理解して納得しなくては貴重な時間とお金を使って歯科医院に来てくれることはないと思います。事前にそういった意義を理解していただくことは難しいかもしれませんが、これをきっかけに来院された際には、患者さんにきちんとした情報の提供と処置の効果を実感して頂けるように私たち歯科医師・歯科衛生士・スタッフが努力しなくてはならないと思います。来院されている限られた時間のなかで、すべてをお伝えするのは難しいので、こういったブログを通じて少しでも知識を深めていただけるように今後も情報発信をしていきます。

次回の内容は、お口の中がどういった環境なのかということについてお話をしたいと思います。皆さんは自分の歯が普段どういった環境におかれているのかということを考えたことはあまりないと思います。皆さんが思っているよりも歯は過酷な環境で頑張ってくれています。その内容を理解すると、きちんとしたメンテナンスが大切であることも納得していただけると思います。